引越しをした。
「Aさん引越」は本当に気持ちよく、精一杯引越サポートしてくれた。
物凄い力持ちで、駿足で、笑顔が爽やかだった。
ちょっぴり残念だったのは6脚セットのダイニングテーブルの椅子の一部に
傷がついてしまった事。
この椅子、約15年程前に家具屋の叔父から買ったもの。
良く分からないので、叔父に見てもらう事にした。
叔父の第一声・・・「良い椅子だね~♪」え?えええええ?これ叔父さんに買って貰った椅子だけど・・・^_^;
そこから叔父が椅子についての話をしてくれた。
この椅子には飾りビスが打ち付けられている。
このビスね、「椅子専門のビス職人が居るんだ」
!え?え?ビスばっかりやる人がいるの?
「そう!」
後ね、「このお尻をのせる革の部分、これも椅子専門の革張職人が居て、座り心地や弾力や色々な物を計算して張り巡らせるんだよ。」
「つまりこの椅子は何人もの椅子職人が魂を一つ一つ込めて作った椅子なんだ。
残念な事に今はもうこんな椅子を見る機会はめっきり減ってしまったよね。欲しくても中々手に入らない・・・
この椅子が作られていた頃はこの椅子のレベルが当たり前だったから、色々な所に技を競い合う職人がいたんだけどね。
例えば今回のこの傷、この椅子を作った時に塗られた塗料は幾つもの色を重ね合わせて作られた色だから、この傷だけ目立たない様にするには相当の色作成の技術と腕がいる。
でもね、その技こそが職人の誇りなんだ。どうだ!ってね。
だけど、時代の流れでそこまでの専門家を置いておける余裕のある会社や百貨店が今は殆ど無くなってしまった。だから技術が継承されずに、何でも平均的にこなせるオールマイティ職人に代わってきてしまったんだね。
西の~さん。東の~さん。椅子の事ならこの二人に叶うのは誰だろうかという時代だった。」
叔父の話が寂しかった。
職人技は継承されなければならないのではないのだろうか。
職人魂は先輩達が築いた宝物、プロとしての誇りはどんな小さな部分にも刻み込まれている。
私は先人達の技をもっともっと大切に扱わなければならないと思うと同時に、
そのプロ魂に少しでも近づけるよう、私も誇りに思える仕事をしようと思った。
椅子の向こうに顔が見えて、今までより、ずっとずっとこの椅子が大切に思えた。